2013年に公開された映画「風たちぬ」。

 
実在した堀越二郎の半生をモデルにした作品であり、二郎が志す飛行機の設計士への道のりを描いています。

 
二郎の周囲には多数の人物が登場しますが、中でもドイツ人のカストルプは異彩を放っており、気になる人も多いと思います。

 
今回は、風立ちぬに登場するカストルプについて正体やモデル、作中で食べるクレソンの理由について考察していきます。

 
 

風たちぬのドイツ人・カストルプの正体は?

カストルプは軽井沢に滞在しているドイツ人として描かれています。

 
カストルプが登場するのは物語の中盤、二郎の隣のテーブルでクレソンとワインで食事をしていました。

 
その後日、再びレストランに訪れた二郎に自ら話しかけていきます。

 
面識のない二郎の職業を前触れなく「エンジニア」と言い当てるなど何処か不気味な存在でしたね。

 
作中におけるカストルプには下記の特徴があります。

カストルプの特徴
・ドイツ人
・社交性が高い
・クレソンをよく食べる
・新聞をよく読む 食事をしながら読んでいる 
・タバコを吸う
・右利き
・日本とナチスドイツに批判的
・何者かに追われている

 
手番が非常に短いですが、印象的な人物です。

 
調べていくと、カストルプには実在したモデルがいたといわれています。

 

カストルプのモデルや元ネタは?

カストルプのモデル・元ネタとされる人物は全部で3人です。

 
●スティーブン・アルパート(元スタジオジブリ海外事業部取締役部長)
 
●リヘヒャルト・ゾルゲ(実在したソビエト連邦のスパイ)
 
●ハンス・カストルプ(小説「魔の山」の主人公)

 
各人ごとに詳細を記述していきます。

 

スティーブン・アルパートはカストルプの声優!

スティーブン・アルパートは、元スタジオジブリ海外事業部取締役部長であり、本作のカストルプの声優を担当しています。

 
アルパートは1990年代後半からジブリに携わり、海外ビジネスを一貫して担当していたようです。

 
しかし、2011年に家庭の事情によりアルパートはジブリを退社し、アメリカへ帰国しました。

 
長年の功労者に対して宮崎監督は、アルパートにそっくりのキャラクターを「風立ちぬ」に登場させたのです。

 
アルパートは声優をするためだけに来日されたようですが、

 

「何とも言えないくらいうれしかったです。

本当に自分の声が映画の中に入れるなんてあり得ない経験だと思うんですよね」

 
と嬉しいコメントを残しています。

 
下記のリンクにアルパートとカストルプの比較写真がありますが、顔のパーツや配置がそっくりですね。

 

リヘヒャルト・ゾルゲがモデルの有力候補!

2人目はリヘヒャルト・ゾルゲという人物ですが、この人が最もカストルプに近いモデルといわれています。

 
リヘヒャルト・ゾルゲはソビエト連邦のスパイ。

 
1944年に49歳で死刑により亡くなった実在した人物です。

 
ドイツ人の父とロシア人の母の間に生まれたハーフであり、1930年ドイツの有力新聞「フランクフルター・ツァイトゥング」の記者という肩書きで日本、イギリス、フランスなどにスパイ活動へ向かっています。

 
ゾルゲはカストルプとの共通点が多いです。

 

ゾルゲ カストロプ
ドイツ人になりすましたソビエトのスパイドイツとの関わり年代ドイツ人ながらナチス政権批判
来日は1933年年代映画の設定は1920〜1930年頃
ドイツの新聞記者という肩書きあり 職業食事中も新聞を読んおり事情通(記者?)
実際に特高警察に捕まった特高警察作中で何者かに追われている(特高警察?)

 
詳細は後述しますが、カストルプがスパイだと思われる点が作中でもあり、ゾルゲがモデルというのは考えられますね。

 

ハンス・カストルプは名前だけ!

最後に、ハンス・カストルプについてです。

 
ハンス・カストルプは、ドイツの作家トーマス・マンの小説「魔の山」の主人公です。

 
一見関係ないように思われますが、「魔の山」は高原のサナトリウムに従兄弟を見舞いに行ったところ、自分の結核が判明して7年間入院した青年の話です。

 
風立ちぬのヒロイン・菜穂子と同じ境遇(結核を患う)の人物であり、むしろ、菜穂子のモチーフとなった人物・ストーリーともいわれています。

 
宮崎監督が「魔の山」を参考にしてリスペクトしたからこそ、同じ名前の人物を登場させた可能性は高いです。

 
他にも作中で、

 

カストルプ 「ここは、Der Zauberberg」

二郎 「魔の山?トーマス・マン?」

カストルプ 「ここは、魔の山。嫌なこと、みんな忘れる。チャイナとの戦争、忘れる。国際連盟抜けたこと、忘れる。チャイナと戦争してる、忘れる。満州国作った、忘れる。国際連盟抜けた、忘れる。世界を敵にする、忘れる。日本破裂する。ドイツも破裂する」

 
という会話があります。

 
しっかりと、「魔の山」「トーマス・マン」とはっきりとセリフが出てきているあたり、間違いなく、宮崎監督からトーマス・マンへのリスペクトの証といえるでしょう。

 

カストルプはモデルが3人?

以上から、カストルプのモデルは、共通点が多いこともあり、リヘヒャルト・ゾルゲの要素は大きいでしょう。

 
しかし、顔はスティーブン・アルパート、名前はハンス・カストルプであり、3人が別々の部分でモチーフになっていますね。

 

カストルプはゾルゲがモデル?

 
カストルプに最も設定が近いのは、リヘヒャルト・ゾルゲと推測します。

 
実際、作中でもカストルプが、ゾルゲ同様にスパイのなのでは?と考察できるシーンがありました。

 

タバコを調達した

まずはタバコを調達した点です。

 
カストルプは二郎と最初にあった際、「ドイツのタバコ、これ、最後」と残り1本を吸っていました。

 
しかし、再び、二郎や菜穂子と再び集まったシーンでは、なんと同じ銘柄のドイツの煙草を吸っています。

 
この2つのシーンから、カストルプは秘密裏に配給係と接触し、独自のルートで手に入れていたことが推測できます。

 
つまり旅行客や通常仕事ではない、裏の道を歩むスパイであることが伺えます。

 

 

ドイツ政権を批判した

カストルプは作中でドイツ人の設定ながら、ドイツのナチス政権を「ならず者の集まり」と痛烈に批判をしています。

 
これは明らかにおかしいですね。

 
ゾルゲの過去を見ていくと、母がドイツ人でベルリンに移住してベルリン大学を出ていますが、最終的にソビエト連邦のスパイとして活動をしています。

 
父はソビエト出身ですが、なぜ大学まで出たドイツから急にソビエト連邦へ枕がえしたのか。

 
詳細は定かではないですが、ドイツに対する何かしらの不信感や体制への不満が働いたと推測できますね。

 

常に新聞を読んでいる

カストルプは最初の登場シーンで、新聞を読みながら食事をしていました。

 
レストランの雰囲気からして、新聞を読んで仕事をする場所ではないと思います。

 
これはつまり、

 
・新聞記者として日本に来ており仕事のため
・何かしらに追われおり情報を得るため(特攻警察?)

 
という、ゾルゲに似た意味があるのではないでしょうか。

 
さらに、カストルプは二郎に会った時にいきなり職業をあてて、日本人のジョークを話すなど細かい部分まで情報を取得しています。

「あなたエンジニア

いつもドイツの飛行機の雑誌、見てます。

日本のエンジニアみんな別荘いく」

 
ゾルゲも表向きは、ドイツの有名新聞である「フランクフルター・ツァイトゥング」に勤務していることになっていましたね。

 
通常の人であればここまでの洞察力は効かないため、何しらの訓練をしている人と推測できます。

 

ゾルゲは最後どうなった?

●タバコを調達した
 
●ドイツ政権を批判した
 
●常に新聞を読んでいる

 
以上の3点から

 
カストルプの設定はスパイであり、中でもリヘヒャルト・ゾルゲがモデルの設定なのでは?と考えます。

 
また、ゾルゲは1941年に日本でスパイ容疑がバレて逮捕をされてしまいます。

 
翌1942年に国防保安法、治安維持法違反などにより起訴され、最終的に死刑の判決が言い渡されています。

 
死刑までの間はは巣鴨拘置所に拘留されており、日本の敗戦間近の1944年11月に死刑が執行されています。

 
カストルプは最後、手を振りながら街を去りますので、誰にも捕まることなく逃亡できたのでしょう。

 

カストルプがクレソンを食べる理由

カルストプといえば、初回の登場シーンで食べている、クレソンが印象的でした。

 
グラスには赤いワインが注がれており、日本では珍しい食事の仕方でした。

 
なぜ、カストルプはクレソンを食べていたのでしょうか。

 
理由は、ドイツ国内のナチスを表現しています。

 
かの有名なアドルフ・ヒトラーが大のベジタリアンだったといわれており、風立ちぬのクレソンには「ナチスの圧政」という隠れた意味があります。

 
カルストプはナチス政権を反対しており、ヒトラーが好きな野菜を自らも食べることで、"ナチスを食う"(=批判)という意味が込められていると考えます。

 
当時のナチス政権を暗に批判していたのでは?と思います。

 

カストルプが登場する意味は?

風立ちぬにカルストプはが短い役なのに、しっかりと登場している理由はなんでしょうか。

 
おそらくは、下記3点でしょう。

 
これはモデルになった人物と深く関わっていますが、それぞれの要素がかけ合わさり、カルストプというキャラクターが登場した推測できます。

 
●スティーブン・アルパート
(元スタジオジブリ海外事業部取締役部長)
→顔が似ているキャラクターを作ってあげたい

 
●ハンス・カストルプ(小説「魔の山」の主人公)
→もう一方で、結核の物語を参考にした小説へ敬意を表したい
→そうすると日本人ではなく、ドイツ人になる。

 
●リヘヒャルト・ゾルゲ(実在したソビエト連邦のスパイ)
→しかし、ドイツ人は当時の日本になかなかおらず、物語の特性上、時代を語る人物を登場させたい
→同じ1930年ごとにドイツ人のスパイがいたので、参考にしよう

 
このようにいろんな要素が重なり、カストルプというキャラクターが登場したと思います。

 

まとめ

今回は

 
●風たちぬのドイツ人・カストルプの正体は?
 
●カストルプのモデルや元ネタは?
 
●カストルプはゾルゲがモデル?
 
●カストルプがクレソンを食べる理由
 
●カストルプが登場する意味は?

 
以上について深堀りをしてみました。

 
 
以上となります。
 
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
 
 

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